2024年09月23日
- メンタルヘルス
不安症のカウンセリング(認知行動療法)
認知行動療法カウンセリングセンター東京品川店代表の岡村と申します。私はこれまで心理士としてさまざまなこころの困りごとを抱える方に対して認知行動療法を専門とするカウンセリングを実施してきました。
現代社会において、多くの人々が日常的に何らかの不安を感じながら生活しています。しかし、その不安が日常生活に深刻な影響を与えている場合、それは「不安症」という疾患の可能性があります。
不安症は、放置すると生活の質を大きく損なうことがありますが、適切な対処法を知っておくことで改善が可能です。この記事では、不安症の特徴的な症状、そしてうつ病との違いについてわかりやすく解説します。
不安症とは?
まず、不安症とはどのような疾患なのかについて説明します。一般的に「不安」とは、「何らかの脅威があるが、その対象が明確でないときに経験する漠然とした心配のこと」と定義されています。脅威がいつ来るのかわからない(予測可能性)、自分にはコントロールができない(統制可能性)という認知的評価がかかわっているとされています。
不安という感情は一見ネガティブに思われがちですが、実は私たちの生活において役立つ側面もあります。日常生活の具体例をいくつか挙げて説明します。
危険を回避するための警戒心
不安は、私たちが危険を察知し、回避するために重要な役割を果たします。
例えば、夜道を一人で歩いているときに不安を感じることで、周囲に注意を払い、リスクのある状況を避ける行動を取るようになります。このような警戒心が働くことで、身を守ることができるのです。
人間関係の維持と強化
不安は、人間関係においてもポジティブな役割を果たします。
例えば、大切な人との関係が悪化するかもしれないという不安を感じることで、その関係を維持するために努力し、相手に対して思いやりを持って接するようになります。
健康管理の意識を高める
不安は、健康に対する意識を高める効果もあります。
例えば、病気になることへの不安が、定期的な健康診断を受ける動機となったり、健康的な生活習慣を身につけるきっかけとなることがあります。
これらの例からもわかるように、不安は誰しもが感じる自然な反応であり、必ずしも悪いものではありません。しかし、不安が過度に強く、持続的であったり、日常生活に支障をきたすような場合、それは「不安症」という状態に発展している可能性があります。
不安症は、単なる一時的な不安とは異なり、持続的で過剰な不安や恐怖を伴う精神的な状態を指します。不安症はさまざまな形で現れ、個人差も大きいため、自分が不安症なのかどうかを判断するのは難しいことがあります。そこで、次に不安症の特徴的な症状を見ていきましょう。
不安症の特徴的な症状
不安症にはさまざまな症状がありますが、主なものをいくつかご紹介します。
持続的な不安感
不安症の最も一般的な症状は、持続的な不安感です。特に理由もなく不安を感じ続ける、または些細なことにも過度に心配することがあります。これにより、日常生活における集中力の低下や疲労感が生じることが多いです。
身体的な症状
不安症は、心の問題だけでなく、身体的な症状としても現れることがあります。例えば、動悸、息切れ、発汗、手足の震え、筋肉の緊張、胃の不調などが挙げられます。これらの身体症状は、実際には心配する必要のない場面でも発生し、さらに不安感を増幅させることがあります。
回避行動
不安症を抱えている人は、不安や恐怖を感じる状況を避けようとする傾向があります。これにより、社会生活や仕事、人間関係に支障をきたすことがあります。例えば、人前で話すのが怖いために、重要な会議を避けたり、外出を控えるようになる場合があります。
パニック発作
不安症の中には、突然の激しい不安や恐怖に襲われるパニック発作を経験する人もいます。パニック発作は、突如として起こり、胸の痛みや窒息感、めまい、死への恐怖などの激しい身体反応を伴います。
不安症の種類
不安症にはいくつかのタイプがあり、それぞれ異なる特徴を持っています。以下は代表的な不安症の種類とその特徴です。
全般性不安症/全般性不安障害(generalized anxiety disorder)
全般性不安症は、特定の出来事や状況に関係なく、持続的かつ過剰な不安や心配を感じる障害です。なんでもかんでも、ずっと(半年以上)、いつも不安でしかたがない状態になるといえます。
この不安は、日常生活の様々な側面に広がり、仕事や健康、家族、経済などについて過度に心配する傾向があります。
パニック症/パニック障害(panic disorder)
パニック症は、突然強烈な恐怖や不安が襲い、激しい身体的症状を伴うパニック発作が繰り返し起こる障害です。発作は予期せず起こり、数分以内にピークに達します。発作後は、再発の不安や恐怖から外出を避けたり、特定の場所や状況を回避する行動が見られることがあります。
広場恐怖症(agoraphobia)
広場恐怖症とは、すぐに逃げ出せない、または何かあってもすぐ助けが来ないような場所や状況を恐れ、回避する障害です。
具体的には…
・すぐに逃げ出せない場所(美容室や映画館、MRIなど)
・人混みや人の列
・公共交通機関(バスや電車など)
・広い場所(大きい駐車場など)
・単独外出
といった状況のうち、不安でしょうがないものが2つ以上ある場合に診断されます。
社交不安症/社交不安障害(social anxiety disorder)
社交不安症は、人前で話したり食事をしたりする際に、過度に緊張・不安が強まり、我慢や回避をしようとする障害です。
この不安は、他人の視線が気になる、人前で恥をかくことを極端に恐れるなど、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
限局性恐怖症(specific phobia)
限局性恐怖症は、特定の対象や状況に対する強烈な恐怖や不安を感じる障害です。
恐怖の対象は非常に多様で、高所、飛行機、動物、血液、注射、閉所などが代表的です。
恐怖の対象に直面すると、激しい不安や恐怖が生じ、可能な限り回避しようとします。
これらの不安症は、日常生活や社会生活に大きな影響を与えることがありますが、適切な治療やサポートを受けることで改善が可能です。それぞれの症状や特徴を理解し、自分や周囲の人が不安症に苦しんでいる場合には、早期に専門家に相談することが大切です。
うつ病との違いは?
不安症とうつ病は、どちらもメンタルヘルスに関わる代表的な疾患です。また、不安症とうつ病は、併発するケースも少なくありません。そのため、それぞれは密接に関連していることが考えられます。しかし、それぞれの疾患は、症状や日常生活への影響といった点で大きな違いがあります。
症状の違い
不安症の主な症状は、持続的な不安や恐怖感です。
これには、心配や緊張が過剰で、日常的な状況に対しても不安を感じることが含まれます。また、動悸や息切れ、震え、発汗といった身体的な症状が現れることもあります。
対して、うつ病の特徴的な症状は、持続的な悲しみや無気力感、興味や喜びの喪失です。
人や物事に対しての関心が薄れ、何をしても楽しく感じられなくなります。また、自己評価の低下や自責の念が強くなり、重度の場合には自殺念慮が生じることもあります。
日常生活への影響
不安症は、特定の状況や行動を避けることで日常生活に影響を与えます。例えば、
社交不安症では、他人との接触を避けるようになり、友人関係や仕事に支障が出ることがあります。
うつ病は、全体的な意欲や関心が低下するため、日常的な活動が困難になります。
これには、仕事や家庭内の責任を果たすことが含まれ、最終的には社会的な孤立や家庭内の問題を引き起こすことがあります。
不安症とうつ病は、症状や影響が異なるものの、どちらも深刻なメンタルヘルスの問題です。自分や周りの人がこれらの症状を感じている場合、早期に専門家に相談することが重要です。
まとめ
不安症は、多くの人が抱える可能性がある疾患ですが、適切な対処法を知ることで改善が可能です。不安症の症状に気づいたら、必要に応じて専門家に相談することが重要です。また、日常生活におけるセルフケアを取り入れることで、不安症の予防や改善に努めることができます。自分自身の心の健康を大切にし、必要に応じて専門家に助けを求めることが大切になるでしょう。
認知行動療法カウンセリングセンターでも、不安症に対して認知行動療法によるカウンセリングを実施しております。まずは無料相談もご活用ください。
認知行動療法カウンセリングセンター東京品川店
https://tokyo.cbt-mental.co.jp/
——筆者情報——
岡村優希
株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役
認知行動療法カウンセリングセンター代表
公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。
さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。
◆執筆書籍
「臨床心理学 〈123(第21巻第3号)〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版
「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房
◆テレビ出演
読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日
「あなたの味方!お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演
◆雑誌掲載
「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号
◆近年の講演実績
2024年2月21日
広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師
2023年2月9日
NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師
2022年7月6日
筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師
その他、学会発表多数
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