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こんにちは。認知行動療法カウンセリングセンター東京品川店です。
今回は、私たちが現在学びを進めている「ポジティブ感情トリートメント(Positive Affect Treatment:PAT)」という新しい手法をご紹介いたします。
この方法は、うつ病の支援において、従来の認知行動療法とは異なる視点を持っている点で、注目を集めています。

※なお、PATは現時点では弊社のカウンセリングに正式導入しているものではなく、現在学習中の段階です。


なぜ「ポジティブ感情」なのか?

従来の認知行動療法(CBT)では、「ネガティブな思考や感情」に焦点を当て、それらの背景にある非機能的な考え方や行動パターンを見直し、より適応的な考え方や行動に修正することで、うつ病の改善を図ってきました。

このアプローチは多くのエビデンスがあり、うつへの有効性も広く認められています。

一方で、うつ病の中核症状の一つである「アンヘドニア(何をしても楽しめない、喜びを感じられない状態)」には、従来のCBTでは十分に届きにくいことがあるとされています。
そこで注目されているのが「ポジティブ感情」に焦点を当てるという新しい視点です。

PATでは、ネガティブ感情を減らすことよりも、「ポジティブな感情を育てること」によって、結果的にうつの改善を目指します。


◆ここでいう「ポジティブ」とは?

PATにおける「ポジティブ」とは、単に楽観的な気持ちや前向きな考え方を指すものではありません。
「安心」「穏やか」「ほっとする」「感謝」「誇らしさ」「好奇心」「人とのつながり」など、私たちが日常の中で体験する心地よさや充実感に根ざした感情を含みます。

これらの感情は、うつによって見えにくくなった「心の豊かさ」に再びアクセスするための足がかりとなります。
PATでは、そうした感情に「気づき」「言葉を与え」「味わい」「育てていく」ことを目的としています。


ポジティブ感情トリートメント(PAT)とは?

PATは、日常の中にある「小さなポジティブ」に気づき、それを味わい、育てる力を養うことを目的としたアプローチです。
具体的には、以下のようなステップを通じて、ポジティブ感情を少しずつ回復させていきます。

1. ポジティブな活動に取り組む

楽しかったことや、達成感を得られた活動など、自分にとってポジティブな経験を生む行動を見つけて、実際にやってみる。

2. 「あじわう」練習

良い出来事があったときに、それをただ通り過ぎるのではなく、「その瞬間の感情」を丁寧に味わう練習を行います。

3. ポジティブな視点を養う

日常の中で起こった出来事の中から、ポジティブな意味や価値を見出し、それに注意を向けるトレーニングを行います。

4. 感謝や思いやりを深める

他者への感謝、誰かの幸せを喜ぶ心、思いやりの気持ちを育てることで、内面的な温かさとつながりを再構築します。


アンヘドニアにどう働きかけるのか?

うつのある方の多くが「何をしても気分が晴れない」「楽しいと思えない」と訴えます。
こうした状態は、いわば“報酬感受性”の低下とも言われており、脳や心がポジティブな刺激をうまく捉えられなくなっていることが背景にあると考えられています。

PATでは、「報酬を予期する」「報酬を味わう」「報酬から学ぶ」といった心の力を段階的に回復させることを目指します。
それによって、少しずつ「また何かやってみようかな」「あれはちょっと良かったかも」と思えるような変化が生まれていくのです。


現在は学習・準備中です

繰り返しになりますが、このPATは現在弊社において導入済のプログラムではなく、あくまで学習中・準備中の手法です。
今後、臨床現場での活用に向けて知識と実践経験を重ねていきたいと考えています。

認知行動療法の枠組みに、ポジティブ感情という視点が加わることで、より柔軟で多角的な支援が可能になるかもしれません。
このような新しい知見を大切にしながら、これからも良質な支援を提供できるよう努力してまいります。


参考文献


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