2025年09月28日
- 認知行動療法
東京品川の認知行動療法研修『睡眠障害へのカウンセリング』
──岡島義先生 オンラインセミナーレポート(2025年9月開催)
睡眠障害は、うつ病や不安障害、発達特性をはじめ、さまざまな心理的課題と密接に関連しています。
「なぜか日中の集中力が続かない」「朝からやる気が出ない」といった状態が慢性化している場合、見逃されがちなのが“睡眠の乱れ”です。
しかし、睡眠への支援は実際には感覚頼みで行われていることも多く、臨床での実践方法に悩む支援者の方も少なくありません。
こんにちは。認知行動療法カウンセリングセンター東京品川店です。
2025年9月27日(土)、Zoomにて開催されたオンライン研修【事例で学ぶ睡眠障害への認知行動療法】には、全国各地から心理職や支援職の方々が多数ご参加くださいました。
講師を務めてくださったのは、睡眠行動科学の研究と臨床の両分野で活躍されている岡島義先生(東京家政大学 教授)。
本レポートでは、セミナーで得られた学びを、ネタバレを避けつつご紹介します。
睡眠を“独立した支援対象”として捉える意義
講義の前半では、睡眠の仕組み(恒常性・概日リズム・覚醒系)や、不眠症がどのように維持されるのかについて、非常に整理された形で説明されました。
岡島先生は、「睡眠は、他の問題が解決すれば自然と良くなるものではなく、支援の軸として扱われるべきテーマである」と繰り返し強調されていました。
実際、多くのメンタル不調の背景には慢性的な睡眠の乱れがありながら、薬物療法や助言に留まってしまっているケースも少なくありません。
CBT-I(不眠症に対する認知行動療法)の介入は、こうした状況を構造的に変えていく有効な手段として注目されています。
参加者からは、「断片的だった知識がつながった」「CBT-Iの構造が初めてわかった」との声が多く挙がりました。
自分自身の睡眠に目を向ける時間にも
今回の研修は、知識のインプット以上に、「支援者自身の生活に目を向ける時間」となったという実感が残りました。
夜間に仕事のことを思い出して眠れなかったり、休日に昼過ぎまで眠ってしまったりといった“小さな睡眠のズレ”が、日常の質に影響していることに気づかされた方も多かったのではないでしょうか。
岡島先生は、睡眠が“努力でどうにかなるもの”とされがちな社会的風潮に警鐘を鳴らしつつ、
「まず支援者自身が整っていることの重要性」
を、押し付けがましくなく、穏やかに、しかし明快に伝えてくださいました。
実例でわかる:支援の組み立て方
講義後半では、岡島先生が実際に担当されたケースの支援プロセスが紹介されました。
面接初回から最終回までの流れを、睡眠日誌・スケジューリング・セルフモニタリングなどの技法を交えつつ、丁寧にたどっていきます。
特に印象的だったのは、技法のテクニックよりも、「関わり方」や「伝え方」への丁寧な配慮でした。
たとえば、記録が取れなかったことを気にするクライエントに対して、岡島先生は
「取ろうと思ったことが、すでに支援の第一歩です」
と、行動に至らなかった“意図”を丁寧に肯定していました。
このように、「できたか・できなかったか」ではなく、「どう取り組もうとしたか」を評価軸にしていく姿勢が、臨床に深い安心感をもたらすのだと実感しました。
ユーモアの効能──“肩の力”が抜ける支援
岡島先生の支援で、もう一つ強く印象に残ったのが、ユーモアを臨床に組み込む技術です。
それは笑いを取るためではなく、
「自責や恥から、ほんの少しだけクライエントを解放する」
ために使われていました。
たとえば、行動記録が続かなかったクライエントに、
「“取らなきゃ”と思っていた時間、それがすでに“最高のCBT”ですよ」
と、軽やかに返すやりとりには、クライエントの表情をほぐしつつ、しっかり支援の方向性を保つ力がありました。
こうしたユーモアは、雑談や気休めとは違い、「支援者の構造理解と対人感受性」があってこそ成立する高度な技法です。
そのさじ加減の絶妙さに、岡島先生の臨床センスが光っていました。
睡眠支援の本質:「よく眠る」ではなく「その人らしく暮らす」
研修の中で、最も心に残ったのは、岡島先生が繰り返し語られていたこの言葉でした。
「眠れるようになることが目的なのではありません。
睡眠を通じて“日中をその人らしく生きられるようにすること”が、私たちの支援です。」
睡眠の改善そのものが目標なのではなく、
“眠れないことで損なわれていた日常生活”を取り戻していくプロセスこそが、支援の本質。
これは、睡眠支援に限らず、他のどの領域にも通じる考え方だと感じました。
Q&Aから:現場の支援に寄り添ったやりとり
セミナー終盤にはQ&Aの時間が設けられ、日々の支援の中で直面する具体的な課題に対するやりとりが行われました。
印象に残ったものを抜粋してご紹介します。
Q:昼夜逆転している方にも、CBT-Iは適用可能ですか?
A:
可能です。ただし“正常な生活リズムに戻すこと”を目標にしすぎると、本人との関係性を損ねることも。
大切なのは、「今の生活で何に困っているか」という主観的困難さをていねいに聞き取ることです。
Q:睡眠薬を服用中の方にCBT-Iを導入しても大丈夫でしょうか?
A:
もちろん導入可能です。薬を使っていても、“自分で調整できる選択肢がある”という感覚を育てることが重要です。
薬を減らすことが目的なのではなく、コントロール感を育むことが大切です。
登壇講師プロフィール
岡島 義(おかじま いさ)先生
東京家政大学 教授(睡眠行動科学研究室)
公認心理師/臨床心理士
日本睡眠学会専門心理師・専門行動療法士/認知行動療法師
睡眠障害への認知行動療法(CBT-I)の臨床と研究を専門とされ、国内外で実践と発信を続けてこられました。
日本行動療法学会「大熊賞」や、日本ストレス学会賞など、複数の学術賞を受賞。
現在も複数の学会で理事・評議員を務めておられ、後進育成にも尽力されています。
アーカイブ視聴お申し込み受付中!
当日のセミナーは録画配信を行っております。
お仕事やご予定が合わなかった方、もう一度学び直したい方も、ぜひこの機会をご活用ください。
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認知行動療法カウンセリングセンター東京品川店のご案内
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