2024年09月25日
- 認知行動療法
盗癖(クレプトマニア)へのカウンセリング
こんにちは。認知行動療法カウンセリングセンター東京品川店代表の岡村です。本日は、盗癖(クレプトマニア)に対する認知行動療法(CBT)のアプローチについてご紹介します。
盗癖は、物を盗むという行動が繰り返され、これが自己制御できない状態を指します。一般的には、盗んだ物が必要であったり、盗んだことにより経済的利益を得ようとしているわけではなく、むしろ緊張や衝動を鎮めるために行われることが多いです。この行動が他者に大きな影響を与えるだけでなく、本人自身にも深刻な心理的・社会的な影響をもたらします。盗癖は道徳的な問題や意志の弱さと誤解されがちですが、実際は支援が必要な心理的な問題です。
盗癖とは?
盗癖は、物を盗むことが自分の意志でコントロールできなくなる状態です。これは一時的な満足感や快感を伴うことが多く、行動を繰り返すことで罪悪感や後悔を感じることも少なくありません。盗んだ物を実際に使用することは少なく、多くの場合は不要なものであり、その行為自体が目的となっています。
盗癖は、以下のような特徴を持つことが多いです。
- 緊張感の高まり:盗む前に強い緊張感や不安感を感じる。
- 行為の衝動:盗みを行う際、衝動的に行動する。
- 一時的な快感:盗んだ直後には、一時的に満足感や快感を感じることがある。
- 罪悪感と後悔:行動後に強い罪悪感や後悔を感じる。
盗癖は通常、単独で存在するのではなく、他の精神的な問題と関連していることがあります。たとえば、うつ病や不安障害、衝動制御の困難さを伴うことが多いです。
認知行動療法(CBT)のアプローチ
認知行動療法(CBT)は、盗癖の改善において有効なアプローチの一つです。CBTは、思考と行動の関係を理解し、問題となる行動を改善するために用いられます。盗癖の場合、衝動的な行動に繋がる思考パターンを修正し、より適応的な行動を取る方法を学びます。
1. 認知の再構成
盗癖に苦しむ人々は、しばしば「盗むことで不安が軽減される」といった思い込みや、「自分はコントロールできない」といった否定的な自己評価を持っていることが多いです。認知の再構成では、こうした不適応な思考パターンを見直し、より現実的かつ建設的な考え方を育てていきます。たとえば、「盗みは一時的な解決に過ぎず、根本的な問題を解決するわけではない」という理解を深めます。
2. 行動療法
行動療法の一つである曝露療法を用いることもあります。これは、盗みたいという衝動が発生する場面に意図的に直面し、その状況下で盗まずにその感情を処理する練習を行う方法です。このプロセスを通じて、盗む行為に依存しなくても衝動をコントロールできる感覚を培っていきます。
3. リラプス・プリベンション(再発予防)
盗癖は改善が進んでも、再発するリスクがあるため、再発予防のための計画が重要です。リラプス・プリベンションでは、再び衝動が高まる状況やきっかけを事前に特定し、それに対する対処法をあらかじめ用意しておきます。たとえば、ストレスを感じたときの健康的な解消法やサポートシステムの活用を学びます。
4. 衝動管理のスキル
盗癖において、衝動をコントロールするスキルが欠かせません。マインドフルネスやリラクゼーション法、呼吸法などを取り入れることで、衝動が強くなった際に冷静さを取り戻す方法を学びます。これにより、盗みの衝動が高まったときに、その感情を適切に処理し、行動に移さないようにする力をつけていきます。
家族や友人のサポート
盗癖の克服には、周囲のサポートが不可欠です。家族や友人が問題に対して理解を深め、感情的に支えることは、回復の大きな助けとなります。盗みの行為に対しては過度な非難を避け、適切なタイミングで専門家のカウンセリングを勧めることが重要です。また、家族や友人が盗癖について学び、再発防止策を共に考えることも大切です。
まとめ
盗癖は深刻な心理的問題であり、放置すると個人の生活や社会的な関係に悪影響を与える可能性があります。しかし、適切な支援を通じて克服することは可能です。認知行動療法(CBT)は、盗癖に対する効果的なアプローチであり、衝動的な行動をコントロールし、健康的な生活を取り戻すための支援を提供します。
当センターでは、盗癖に悩む方々に対して個別のカウンセリングプランを提供し、改善を目指すサポートを行っています。お困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
認知行動療法カウンセリングセンター東京品川店
https://tokyo.cbt-mental.co.jp/
——筆者情報——
岡村優希
株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役
認知行動療法カウンセリングセンター代表
公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。
さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。
◆執筆書籍
「臨床心理学 〈123(第21巻第3号)〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版
「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房
◆テレビ出演
読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日
「あなたの味方!お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演
◆雑誌掲載
「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号
◆近年の講演実績
2024年2月21日
広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師
2023年2月9日
NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師
2022年7月6日
筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師
その他、学会発表多数
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