MENU

認知行動療法カウンセリングセンター東京品川店代表の岡村と申します。私はこれまで心理士としてさまざまなこころの困りごとを抱える方に対して認知行動療法を専門とするカウンセリングを実施してきました。

 みなさんは「パーソナリティ障害」という言葉を聞いたことがありますか?

もしかすると、名前は知っているけれど疾患について具体的に知らない、または全く耳にしたことがないという方も多いかもしれません。実際に、パーソナリティ障害は一般的にあまり理解されていない疾患のひとつです。しかし、実は多くの人がその影響を受けている可能性があり、私たちの社会や人間関係においても無視できない疾患です。

そこで今回はパーソナリティ障害について、種類・タイプ別の原因や特徴について解説していきたいと思います。

はじめに:パーソナリティ障害とは?

私たち一人ひとりの性格や行動は、長年の経験や環境、遺伝的な要素が組み合わさって形成されると考えられています。しかし、時にはその性格や行動が極端に偏り、日常生活や人間関係に深刻な問題を引き起こすことがあります。これが「パーソナリティ障害」と呼ばれるものです。

パーソナリティ障害は、個人の思考パターンや感情、行動が社会的な期待から大きく逸脱し、その結果、職場や学校、家庭での機能に支障をきたす状態を指します。単なる「個性」や「性格の違い」とは異なり、パーソナリティ障害はしばしば当事者自身や周囲の人々にとって深刻な問題を引き起こします。

パーソナリティ障害の種類と特徴

パーソナリティ障害は、多岐にわたる症状を持つため、いくつかの異なるグループに分類されます。ここでは、アメリカ精神医学会が発行するDSM-5(精神疾患の診断と統計マニュアル第5版)に基づくパーソナリティ障害の分類について、詳しくご紹介します。

現在パーソナリティ障害は、3つのクラスターと10のタイプに分類されています。

クラスターA:奇妙で風変わりな行動パターン

クラスターAに含まれるパーソナリティ障害は、奇妙で風変わりな考え方や行動(習慣)を特徴とします。

・統合失調型パーソナリティ障害 

統合失調型パーソナリティ障害の特徴は、奇妙な思考や行動、信念を持ちやすい点です。たとえば、他人が自分の考えを読んでいると思い込むことや、特定の無意味な儀式を日常生活の一部として取り入れることが挙げられます。これらの特異な行動は、社会的な関係を築く上で障害となることが多いです。

・猜疑性(妄想性)パーソナリティ障害 

猜疑性(妄想性)パーソナリティ障害の特徴は、極度の不信感や疑念です。他人の意図や行動を悪意的だと解釈する傾向が強く、常に裏切りや攻撃を警戒しています。このため、他者との関係が緊張しがちで、孤立することが多いです。

・シゾイド(統合失調質)パーソナリティ障害 

この障害の特徴は、社会的な関係や親密な人間関係に対する無関心です。他者と関わることに興味を持たず、孤独を好む傾向があります。また、感情表現が乏しく、冷淡な印象を与えることが多いです。

クラスターB:劇的で感情的な行動パターン

クラスターBに含まれるパーソナリティ障害は、演技的かつ情緒的・衝動的で移り気にみえることを特徴とします。

・境界性パーソナリティ障害 

境界性パーソナリティ障害は、感情の不安定さと対人関係の激しい変動が特徴です。感情が極端に揺れ動くため、衝動的な行動に走りがちです。また、自己イメージが不安定で、極端な自己嫌悪や過度な自己評価が交互に現れることがあります。

・自己愛性パーソナリティ障害 

自己愛性パーソナリティ障害の特徴は、自己中心的で他者からの賞賛を強く求めることです。自己の価値を過大評価し、他者を軽視する傾向があり、他者との共感が欠如しています。また、批判されることに過敏で、怒りや恨みを感じやすいです。

・反社会性パーソナリティ障害

反社会性パーソナリティ障害は、他者の権利や社会的規範を無視する行動が特徴です。嘘をついたり、違法行為を行ったりすることに罪悪感を感じにくく、他者を操作することに長けていることがあります。また、衝動的で攻撃的な行動を取りやすいです。

・演技性パーソナリティ障害

演技性パーソナリティ障害は、他者からの注目を引きたがる行動が特徴です。過度に感情表現を誇張し、周囲の人々に対して魅力的に映るように振る舞います。そのため、相手に合わせ外見を変えたり、過度に流行を追ったりすることも特徴のひとつと考えられます。

クラスターC:不安を伴う行動パターン

クラスターCに含まれるパーソナリティ障害は、不安や恐怖心に満ちた行動傾向を特徴とします。

・回避性パーソナリティ障害

回避性パーソナリティ障害は、他者からの否定や批判を強く恐れるため、社会的な状況を避ける傾向があります。自己評価が低く、失敗や拒絶を恐れるあまり、人間関係を築くことが困難です。

・依存性パーソナリティ障害

依存性パーソナリティ障害は、他者に対する依存心が非常に強く、独立して行動することに不安を感じます。自分の決定や意見に自信が持てず、常に他者の支援や指示を求めるため、結果的に支配的な関係に陥りやすいです。

・強迫性パーソナリティ障害

強迫性パーソナリティ障害は、秩序や完璧さに対する強い執着が特徴です。物事を完璧に行わなければならないという考えから、柔軟性を欠き、他者との協力が困難になることがあります。また、細部にこだわりすぎるため、効率的な行動ができなくなることもあります。

パーソナリティ障害の原因

パーソナリティ障害が発症する原因は一つではなく、複数の要因が関与しています。ここでは、主な原因として考えられている遺伝的要因と環境的要因について解説します。

遺伝的要因

パーソナリテイの形成には、生まれもった「気質」が大きく影響を与えています。この「気質」は、個々の性格の基礎となるもので、遺伝的な要因が関わっていると考えられています。しかし、パーソナリティ障害と遺伝との関係については、まだ研究途上にあり、解明されていない部分も多く残されています。

環境的要因

パーソナリティ障害の発症には、子供時代の環境や成育歴も大きく影響します。虐待やネグレクト、家庭内暴力、親との関係の不和など、幼少期に経験する逆境がパーソナリティ障害のリスクを高めることが知られています。また、成長過程での不適切な教育や社会的経験が、人格形成に影響を与えることもあります。

パーソナリティ障害に対する治療法

パーソナリティ障害に対する治療法は、主に薬物療法と心理療法が用いられます。しかし、パーソナリティ障害の治療においては、薬物療法はあくまで症状の緩和を目的とすることが多く、根本的な治療には限界があります。そのため、薬物療法だけでなく、心理療法と併用することが一般的です。

様々な心理療法の中でも、認知行動療法は、パーソナリティ障害の治療において広く使用され、その効果が認められています。ここでは、特に有効とされるいくつかのアプローチについて簡単に紹介します。

1.弁証法的行動療法(DBT)

弁証法的行動療法(Dialectical Behavior Therapy: DBT)は、アメリカの心理学者であるマーシャ・M・リネハンにより考案された、境界性パーソナリティ障害の治療に特化した認知行動療法プログラムの1種です。

2.スキーマ療法

スキーマ療法は、生きづらさの根っこにある「スキーマ」に焦点を当てる認知行動療法を中心とした統合的な心理療法です。アメリカの心理学者であるジェフリー・ヤングによって提唱されました。

まとめ

パーソナリティ障害は決して「性格が悪い」といった単純なものではなく、深刻な精神疾患であり、適切な治療が必要です。この記事では、パーソナリティ障害の種類やその原因、治療法について詳しくご紹介しました。パーソナリティ障害についての理解を深めることで、自分自身や周囲の人々の心の健康を支える一助になれば幸いです。

認知行動療法カウンセリングセンターでも、パーソナリティ障害に対して認知行動療法によるカウンセリングを実施しております。まずは無料相談もご活用ください。

認知行動療法カウンセリングセンター東京品川店

https://tokyo.cbt-mental.co.jp/

——筆者情報——

岡村優希

株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役

認知行動療法カウンセリングセンター代表

公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士

個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。

さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。

◆執筆書籍

「臨床心理学 〈123(第21巻第3号)〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版

「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房

◆テレビ出演

読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日

「あなたの味方!お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演

◆雑誌掲載

「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号

◆近年の講演実績

2024年2月21日

広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師

2023年2月9日

NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師

2022年7月6日

筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師

その他、学会発表多数

一覧に戻る